4月1日。各地で桜が見頃を迎えている中、特に花見の予定もなかった私は、ちょうど母と出かけた先の美術館で満開になった桜を眺めていた。まだ満開になって間もないようで、花びらが散った様子はない。
ふと母が言った。「友達と花見でもしてくれば?」
そういえば、バーミリオンさんのスイフトに乗せてもらい、マスカレさんと勝沼の桜並木を見に行ったよなぁ。あれは何年前だっただろうか。調べてみると、3年前のちょうどこの日の辺りだった。急に久しぶりにあのメンバーで勝沼の桜を見に行きたいと思いカレンダーを見ると、明後日の3日が日曜日だ。この日はどうだろうか。3年前は殆どの人が予定が合わず3人しか集まらなかったが、今回は少しでも多く参加者が集まることを願って、友人に片っ端から連絡を送る。その一方で、あまりに急なお誘いのために1人も予定が合わないことも覚悟していた。
しかし、最終的には私を含め5人の参加が決まり、私の心配事は返事がない数名の行方に向いていた。ちなみに、もしあと1人でも増えれば、史上初のミニバンになるというところだった。もう大人数ならミニバンも歓迎だ!
当日、いつも通りに(遠足の朝の子供のように)早朝に目が覚めると、雨の音がした。せっかく5人集まったのに、中止するわけにはいかない。天気予報を確認すると甲府方面は曇りのままで、7時現在小雨となっている東京も昼までには曇りに変わるとのことで、予報を信じて決行する。雨の中4人を乗せて、車内はどういうわけか「うど」の話で盛り上がっていた。
雨が止まなければどうしようかと考えながら、中央自動車道を西へひた走る。天気はどこまで走っても不安定な状態で、談合坂SAでは曇りだったが大月を過ぎる頃には再び小雨に当たるといった具合だ。これでは勝沼の天気が全く予想できない。祈るような気持ちで勝沼に入ると、路面が完全に乾いていて雨が降った形跡すらなかった。やった!花見ができる!と、コンビニで食料を調達して3年振りの勝沼駅前の桜並木へ向かった。
勝沼駅周辺にある桜並木は「甚六桜」という名称がついていたとのことで、知らないまま今まで何度か訪れていたわけだ。前回来た時は平日で、なおかつ夕方だったので閑散としていたが、今回は日曜日ということで駐車場が入場待ちになるほどの混雑であった。
車を停め、用意しておいたシートを敷く。勝沼の桜はまさに満開になったばかりらしく、花びらが全く散っておらず、非常に綺麗な様子を楽しむことができた。えびせんを食べ、こんにゃくを食べ、魚肉ソーセージを食べ、自撮りばかりして、楽しい一時を過ごした。空はずっと今にも雨が降り出しそうな黒ずんだ曇り空だったが、結局その後雨が降ることはなかった。雨が降らなくて本当に良かった。
花見の後は勝沼駅の東に保存されている中央線の大日影トンネルを見に行く。全長1.4km弱あり、往復すると1時間はかかるとのことで、入り口付近だけで我慢することにした。さすがに全部歩くのは大変だ。勿論ここでも自撮りは忘れずに。
勝沼から帰る前に、そばが食べたいということで勝沼から東に10分ほど走らせた先にある「砥草庵」にお邪魔した。昔ながらの民家風の店内は時間が遅いこともあってか貸切状態で、まるで旅館に泊まりに来たかのようにのんびりと過ごすことができた。皆はとろろそば等を、私は山菜そばを注文、美味しくいただいた。
16時頃に中央自動車道に乗ると、相模湖付近で渋滞にはまった。この辺りは混雑でどうしても渋滞するのでもう慣れてしまい、私1人だけが実践しても意味はあまりないのだが、渋滞を解消させようとなるべくブレーキを踏まず停止しないようにしながら遊んでいた。渋滞の時は追い越し車線よりも走行車線の方が進みやすいとはよく耳にする話で、その理由の1つに「追い越し車線の車はどれも渋滞中なのにも関わらず、前の車が発進するとそれに合わせて勢いよく発進して、すぐに追いついてブレーキング、詰まって一斉に停止してしまう」というのが挙げられると思う。それは観察していて感じた。走行車線の車はどれも急ごうとしないので緩やかに動いているため、結果的に詰まらないのだろう。事故があるわけでもないので、何となく渋滞は解消し、目的のICを降りた。つくづく混雑による自然渋滞ほど無駄な渋滞はないと思った。
今回の車は、ちょい乗りを除けば北海道以来となるスバルのインプレッサスポーツ1.6iである。友人からのデザイン評価はあまり良くなかった。やはり、世間(?)のインプレッサといえばスポーティなブルーのインプレッサだろう。現在WRXはモデルとして独立していることだし、これはもう別物と考えるほかない。運転している私としては、やはり油圧パワーステアリングは操作が気持ち良いなと感じていたことが挙げられよう。また、5人乗ってもインプレッサくらいのサイズになると然程狭くは感じないし、何より5人も乗ると車内が賑やかで、これはいずれ車を買う時は2シーターやコンパクトはダメだなと確信することになる。
そしてCVTを介して走る1.6L自然吸気エンジン車の5人フル乗車の性能は「納得できるレベル」としか言えない印象だった。100km/h程度なら問題なく走れるが、さすがに追い越し加速は厳しい。アクセルペダルを床まで踏み込んでも気がつかないくらないに加速は鈍くなるが、これは仕方がなく、1人で走る訳ではないので終始落ち着いて走らせたが、ゆったりと走るなら動力性能に不満はない。最も気になった点は動力性能ではなく、車内の静粛性だった。高速道路上ではロードノイズの大きさのせいか、さすがに前後シート間での会話は難しいことがわかった。前後で会話するには声を張り上げる必要があり、折角5人でドライブしているのに、道中会話がしにくいのでは不満が残る。
安全運転に徹し、無事に東京にまで帰ってくることができた。始めは雨が不安で仕方がなかったものの、花見から帰宅まで雨が降ることはなく、雨に負けず決行して良かったと思った。半年振りにこのメンバーで集まれたし、新年度の始まりを前にまた1つ思い出ができた。こうしてまた皆でドライブに行けたらと思う。
私にとってのドライブは、二種類に分けられる。1人で車と対話するように走り続けるドライブと、友人と共に観光を目的として走るドライブ。最近になって、どちらも私にとってとても大切なものだと明確に意識するようになった。少し話は逸れるが、現在就職活動中の私は、今までと何かが変化しつつある。前の私なら、就職活動は人生の中の不安要素の最上位でしかなかったが、どういうわけか意識が切り替わって「楽しみながらゴールを探すイベントのようなもの」になり、企業の方との対話や、知らない業界の裏側を知ることがとても楽しくなった。この影響を受けたのか、毎日の出来事がどれも大切なこととして受け止めるようになり、不思議なことに、殆ど毎日のように「今日は良い日だった、思い出になるな」と考えるようになった。
4月を迎えて新年度が始まる中、学生生活最後の1年間がどうなっていくのかこれまでになく楽しみであり、期待しているところである。