2015年9月2日(9日目)
北海道余市郡余市町黒川町〜岩手県奥州市前沢区(東北道)
走行604km
総合4426km
スバル インプレッサスポーツ 1.6i
6時起床。昨夜は真っ暗だったので気がつかなかったが、この「道の駅スペース・アップルよいち」のある余市市は毛利衛さんの出身地で、道の駅に宇宙記念館が併設されている他、毛利さんが宇宙飛行の際に用意した桜の種を植樹したものを片隅に見ることができた。また連続テレビ小説「マッサン」の舞台でもあるらしく、結構有名な場所のようだ。全然知らずに来ていた。残念ながら宇宙記念館開館を待つ余裕はないので、函館に向けて出発する。なお、バイクの友人2人は今日宗谷岬を訪れる予定とのことで、宗谷丘陵を走るよう強く勧めておいた。
道南に戻ってくると、この辺りは普通の田舎道といった感じがして、特に感動するような景色はない。ただ道幅は広いので依然として北海道らしさは感じられる。雲行きが怪しいのが気になるが、函館まで200km程度、今日は昨日のように焦る必要もなさそうだ。
家族が「お土産が欲しい」というので、途中いくつかの道の駅に寄りながら進んでいくが、あまり良いものが見つからない。そして一度聞いたら忘れない地名「長万部」が近くなると、結構な雨が降り出した。広い大陸を移動しているのだから、本当に天候の移り変わりが激しく、予想がしづらい。長万部駅はこぢんまりとした佇まいをしている。
北海道特有のガソリンスタンド「ホクレン」で給油して、友人から頼まれていたオリジナルのフラッグを全種類揃えることができた。ネット上では「車のドライバーにはフラッグは売らない」などというおかしな噂が流れていたが、拒否されるどころか、シーズンも終わりだからか喜んで売ってくれた。地図付きのガイドブックも頂いた。
函館まで残りあと少しというところで、雨が猛烈な降り方に変わった。道路が冠水しかけた箇所も多く、轍に溜まった水にタイヤが乗ることもしばしば。非常に危険な道路状態だった。
函館に着くと、北海道に来て初めての踏切待ちで黄緑色の特急が通過した。このブログでは殆ど触れなかったが、今回の旅の中でJRの列車は本数の割に遭遇することがとても多く、形式名がわからなかったので後で調べてみると、キハ183系特急北斗、キハ283系スーパーおおぞら、789系スーパー白鳥、キハ54形、キハ150形を見ることができたようだ。普通列車には少し乗ってみたかったが、かなり時間に余裕が要ると思われるので、またいつか。
予定通り走り、12時頃に函館に着いた。ここから一旦函館を通過し、北海道で寄る予定の最後の場所、トラピスト修道院へ向かう。それにしてももの凄い勢いの雨で、海も荒れている。フェリーは「平常運航」と書かれているが、問題ないのだろうかと少し不安になる。乗れたとしても、揺れるのは嫌だから。
トラピスト修道院に着いた。私の他にはレンタカーが2台のみで、すぐに帰ってしまい私1人となった。ここに来たのは、何と言ってもこのヨーロッパのような風景を見るためである。北海道に来てから私は「ヨーロッパ」という単語を何度も発しているが、つまり私はヨーロッパを日本に求めて北海道に来ているのに過ぎなかったということなのかもしれない。イギリスやドイツの田舎道を車で走ることを夢見ている私にとっては、北海道とはそういう場所のようだ。本州には見られない日本離れした景色の数々を見るためにルートを設定し、実際にその景色を見ては感銘を受けてきた。ヨーロッパまで行かなくても、こんな景色があるんだよ、と。
閑静な修道院の奥に行くのは気が引けるので、駐車場横の売店でクッキーとソフトクリームを買うだけにした。ソフトクリームは北海道内の他の場所でも食べたが、トラピスト修道院のそれが最も美味しかった。クッキーも付いて、満足度は高い。
修道院の周りの森はどう見てもシュバルツヴァルトにしか見えない、と言えば言い過ぎか、とても美しい。大雨が止まないので心配だったのだが、なかなかに幻想的な雰囲気を醸し出していて杞憂に終わった。逆に雨の中の方が風情があって良いかもしれない。インプレッサも、ドイツまで連れてきたかのような想定で、右側に停めてみたりして。30分ほど滞在の後、大いに満足してトラピスト修道院を後にする。
修道院を出ると雨脚がさらに強くなり、視界が殆どなくて恐くなるほどだ。フェリーを降りるのが18時の予定で、そこから日付が変わるまでに可能な限り東京に近づいておく必要があったので、今のうちに給油を済ませておく。フェリーターミナルが近くなると、函館駅を通過、路面電車を見かけるようになった。函館はさすがに北海道の中でも人が多く、長い期間に渡って信号のほぼゼロに近い道を走ってきた私には、少し走りにくい。途中で見つけたセイコーマートで、フェリーの中で食べる夕食を購入。もちろん、例のお弁当を。
お土産を探して、赤レンガの建物が並ぶショッピングモールらしき場所にも行ってみたが、駐車場が有料とのことで諦め、フェリーターミナルの売店に全てを託すことにする。北海道で駐車場が有料なんて、これが初めてだ!
これ以上函館の町に用事はないので、後はフェリーターミナルに行くしかない。これでフェリーターミナルの近くに絶景スポットでもあれば名残惜しくなって困るのだが、良くも悪くも普通の町でしかないので、すんなりとフェリーターミナル前の「大間行き」の列にインプレッサを停めた。ターミナル内の売店でお土産を買い込み、インプレッサに戻って荷物整理をして過ごした。私たちがフェリーに向かって列を作るように、カモメ達が大勢で並んでいて面白かった。
いつの間に私が乗る予定のフェリーがそこにいるではないか。そういえば、あんなに強かった雨も止んでいる。16時前になり、乗船が始まった。北海道を走るのもこれで最後かと思いながら、ドアを閉める。
無事に乗船したら、出港する前に先にお弁当を食べておこう。これで3度目となるチキン南蛮弁当は、まだ飽きない。あっという間に食べ終えてふと窓の外を見ると、函館の街並が見える。これはデッキに出て見るしかない。私は帰りの便でも座敷には行かず、デッキから外を眺めていた。
最も高いデッキに出て函館、いや北海道を眺めていると、この数日間で見た景色の数々が頭に浮かび、思わず涙が溢れてきた。北海道は、素晴らしいところだった。本当に素晴らしかった。離れていく北海道を見ていると、とにかく涙が止まらない。まずい、このままでは船内に戻れないし、誰かが来たら顔を見せられない!何とか涙をこらえていると、見る見るうちに黒い雲に包まれた空が晴れてきて、大きな二重の虹が現れた。背後を見ると、思いっきり虹の北海道を照らす青空が。何なんだこの演出は!こんな大きな虹を見たのは22年生きてきた中でも初めてではないか。あまりに予想外の展開に涙も止まり、デッキの下の方に行ってみると数人の乗客も虹を楽しんでいた。おまけに虹が消えたと思ったら、光のカーテンが現れた。船内にいたらこの虹は見ることができなかったと思うと、本当に運が良かったと思う。たまたまデッキにいた人たちだけの特権である。北海道のラストを飾るのに最高の船旅だった。iPhoneの地図を見ながら、この広い北海道を一周したんだ!と想いを噛み締めていた。
時刻は18時近く、定刻通りフェリーは青森県の大間フェリーターミナルに到着した。長くも短くも感じた北海道の旅は、大満足のうちに終わりを迎えた。残るは、無事に東京に帰ること、それだけだ。
(後編へ続く)
<目次>
08/25 東日本Road Trip Part 1 東京〜酒田
08/26 東日本Road Trip Part 2 酒田〜大間
08/27 東日本Road Trip Part 3 大間〜日高
08/28 東日本Road Trip Part 4 日高〜士幌
08/29 東日本Road Trip Part 5 士幌〜釧路
08/30 東日本Road Trip Part 6 釧路〜納沙布・羅臼〜釧路
08/31 東日本Road Trip Part 7 釧路〜名寄
09/01 東日本Road Trip Part 8 名寄〜宗谷〜余市(前編)
09/01 東日本Road Trip Part 8 名寄〜宗谷〜余市(中編)
09/01 東日本Road Trip Part 8 名寄〜宗谷〜余市(後編)
09/02 東日本Road Trip Part 9 余市〜奥州(前編)
09/02 東日本Road Trip Part 9 余市〜奥州(後編)
09/03 東日本Road Trip Part 10 奥州〜東京
東日本Road Tripの記録 番外編