気を取り直して、オロロンラインへ合流する。北海道でも特に有名な、無限に続くかのような直線道路である。留萌まで139kmとの表示。左は草原、右は海、それ以外に何もない。ただ何もない直線をひたすら走る。遅い遅いダンプを追い越す。対向車線にダンプが来たので、気を引き締め直す。バイク集団とすれ違う。ただひたすら走り続ける。道の駅が見えてきたが、止まる気が起きずに通過してしまう。何となく路面に目を落とすと、あまりに皆が同じ部分ばかり走るので、アスファルトなのにはっきりと轍ができている。採石場らしきものも多く、ダンプの通行量が多いこともあるだろう。この道を走れば、Top Gearで、ネバダ州をボンネヴィルに向かう直線道路でドアパネルの縫い目を数えたくなる気持ちが理解できる。
しばらく鉄道のように走ると、前方左手に風力発電の風車群が見えてきた。宗谷丘陵の風車群も良かったが、こちらもまた壮観だ。ただ、オロロンライン全体の中でこれらの風車群はほんの一瞬でしかなかった。また何もない道に戻ってしまう。30分近く直線を走り続けただろうか、感覚が麻痺して体感では1時間近く走っていたような気がするが、オロロンラインが何となく終わり、「道の駅てしお」で小休憩をする。
ここから先は、緩やかなカーブが続く常識的な道になったが、相変わらず殆ど何もない。何もない中に突如バス停が現れて驚くくらいだ。ここで降りてどうするの!
次第に夕暮れになり始める → 綺麗な夕焼けになりそうだ → とても綺麗な夕焼けになった。あまりに綺麗なので、少しだけ止まって撮影タイムにしよう。ただ、夕焼けとインプレッサを上手く絡めるのは難しい。
留萌に着く頃には18時を過ぎていた。夕焼けは見とれてしまうくらいに綺麗だった。果てしなく長い間走っているような気がするが、まだまだ先は長い。しかし、セイコーマートがない。困ったものだ。
19時になり、すっかり辺りは暗闇に包まれた。留萌から先は、山の中を縫うようにトンネルが続く。私の他に車は殆どいないので、ヘッドライトをハイビームにしたままの状態が続く。昼間だけでも人生観を左右するような光景を幾つも目の当たりにしてきたので、さすがに疲労を隠せなくなってきた。景色もなく、トンネル、暗闇、トンネル、暗闇の繰り返しが永遠に終わらないループに入ったような気分になってくる。そんな時に、突然まばゆいオレンジ色の看板が...セイコーマートだ!
救いを求めてセイコーマートに駆け込むと、豊富な種類のお弁当が用意されていた。セイコーマートはしばらく見かけない区間もあったが、基本的には他に何も商店がなさそうな小さな町でもセイコーマートだけはあると思って良い。もうセイコーマートなしでは生活できない、セイコーマートは神様のような存在だ。ありがたくお弁当を買い、夕食に。期待を裏切らず、美味しい。
エネルギーを補給して出発すると、青看板に「札幌」の文字が出てくるようになった。20時半、右手に沢山の光が見えてきた時は、安堵とともに感動すら覚えた。ただ、札幌には残念ながら寄る予定はない。まだまだ気を緩めるわけにはいかないのだ。地図とナビを照らし合わせ、今日の宿泊地は小樽の少し西、余市にある「道の駅スペース・アップルよいち」にすることにした。凄くインパクトのあるネーミングである。また、明日の夜に岩手県天童市で予約していたビジネスホテルに恐らく間に合いそうにないので、キャンセルの電話をした。前日のキャンセルになって申し訳ないと思ったが、軽く了承してくれて拍子抜けした。
普通に走っているのに、なかなか目的地に着かない。ナビでは小樽が圏内に入っているのに、なかなかたどり着けない。小樽運河に着く頃には、22時近くになっていた。運河の横にインプレッサを停め、少しだけ運河を散策する。やはりこの運河は夜に来るのが正解だろう。人はまばらで、ガス灯のような色の照明、建物のライトアップ、それらが映り込む水面。なかなかの美しさだ。しかし、数時間前に遥かに壮大な自然というものを見てきた私には、少々物足りないと感じてしまうのも仕方のないことだった。
北海道を後にする前に、泥だらけのインプレッサを綺麗にしたい、またコイン洗車機を使ったことがないので使ってみたいと考えていた私は、近くにコイン洗車場があることを見つけ、行ってみた。もちろん誰もいない中、最も安い水洗いコースを選んで、洗車開始。フロントは虫だらけで、洗車機の水圧をもってしてもなかなか落ちず苦労した。リアは砂埃まみれで、主に釧路湿原のダート路で巻き上げたものだろう。かなり綺麗になって満足した。後は、「道の駅スペース・アップルよいち」に行くだけだ。
今日も23時になり、やっと執着地点に着いた。「道の駅スペース・アップルよいち」の駐車場は殆ど満車に近かった。全員車中泊するのだろう。半数近くがキャンピングカーで、異様な光景である。奥の第二駐車場が少しだけ空いていたので、そこで無事に車中泊をすることができそうだ。
昨日と今日、景色はあまり変わらない時間が長かったけれど、私にとっては激動の日々を送っている。昨日の朝に網走にいて、今朝は名寄にいて、昼に宗谷岬にいて、宗谷丘陵を走って、今ここにいるのが何だか信じ難い。明日はもう、函館に戻るだけである。
<目次>
08/25 東日本Road Trip Part 1 東京〜酒田
08/26 東日本Road Trip Part 2 酒田〜大間
08/27 東日本Road Trip Part 3 大間〜日高
08/28 東日本Road Trip Part 4 日高〜士幌
08/29 東日本Road Trip Part 5 士幌〜釧路
08/30 東日本Road Trip Part 6 釧路〜納沙布・羅臼〜釧路
08/31 東日本Road Trip Part 7 釧路〜名寄
09/01 東日本Road Trip Part 8 名寄〜宗谷〜余市(前編)
09/01 東日本Road Trip Part 8 名寄〜宗谷〜余市(中編)
09/01 東日本Road Trip Part 8 名寄〜宗谷〜余市(後編)
09/02 東日本Road Trip Part 9 余市〜奥州(前編)
09/02 東日本Road Trip Part 9 余市〜奥州(後編)
09/03 東日本Road Trip Part 10 奥州〜東京
東日本Road Tripの記録 番外編